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映画報vol.11(美女と野獣)―2 12:01
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    ピエール=イヴ・ゲロー =「美女と野獣」の衣裳を手がけた衣裳デザイナー
    のインタービューがこちら。ロング・インタビューです。  

    URL:http://www.aficia.info/cinema/interview-de-pierre-yves-gayraud/5891
    <人:ピエール=イヴ・ゲロー(Pierre-Yves Gayraud) 媒体:Aficia>


    〈訳文〉
    ――「美女と野獣」の衣裳制作で印象に残っていることは何ですか?

    「これまでにも私は、時代劇と現代劇の仕事をいろいろ経験させてもらっていて、いつもバランスをみながら重複することがないように気をつけてきましたが、今回の場合はチャレンジで、時代劇の範疇にありながら、それにがちがちにとらわれるというのではなく、様式的なこととおとぎの国的なことの間で、ちょうどいいバランスをとることが試されました。フランス第一帝政時代の時代設定になるということは先に決まっていました。私が制作に入った時期は8月で、撮影は10月終わりにはじまって、いつも時間に追われていたのを思いだします。アトリエの作業は、パリではじまりました。撮影がはじまってからも、アトリエをベルリンに移して衣裳づくりの作業は続きました。私は、以前にも何度かこのバベルスバーグ(スタジオ)で仕事の経験があったので、安心してやれて、すばらしい環境でした。私たち衣裳チームには、はじめからドイツ人スタッフもフランス人スタッフも混ざっていましたけれど、当初から私たちは、ベルのドレスのことと野獣のコスチュームのことでも大きな問題を抱えました。私たちは、仕立ての上等なコスチュームを作るぞという意気込みにあふれていたんですが、その一方で特殊効果の関係で自由にならない部分もあり、第2撮影チームの見解のもとでそれらをすり合わせなければならなかったんです。でも自由にならない部分があるからといって、そのことにばかりとらわれすぎないようにしました。」


    ――衣裳は同じものが何着もあったのですか?

    「はい、ベル役のレア・セドゥのシーンのうち大部分のシーンは、レア・セドゥと第1撮影チームで撮られていたんですが、廊下のシーンや引きの絵のシーンなどでは、代役の俳優を立てて撮影が並行して行われることがあって、衣裳もまったく同じものが必要でした。費用がかかって、素材選びは大変です。でも私は、コピーを作るのがむずかしいからといって何かをあきらめるようなことはありませんでした。たとえば、ベルは、氷の上を走ったり、水に飛び込んだり、馬に乗ったりするシーンがありますが、それらのシーンでベルが着ているのは、とても繊細で壊れやすい素材のものです。それがアクションシーンで着るものだと知らなくて私たちはそうしたのではありません。私たちはプランを変更しなかったのです。衣裳のメンテナンスと、そうした自由にならない部分にかけては、私たち衣裳方は想定しているものです。」


    ――自由にしていい部分というのはどんなところでしたか?

    「制作がはじまるときに、監督からこうしてほしいというような指示はあったんですが、実は、監督のクリストフ・ガンズは、彼の右に出るものはないくらいシネ通で、なので技術者を選ぶときも、誰がその道の適任者かをよく知って選ぶ人なのです。私も大部分が自分の自由にやらせてもらいました。上品で、人目を引いて、御伽のようで、豊かな構成と、色彩も豊かな仕上がりになることをはじめから信じてくれていたのでしょう。ありがたいことです。私は、数年来その腕を頼りにしているアトリエのチーフスタッフがいますし、私のやり方というのは、職人的で、つまり、デッサンに起こすよりも先に直でマネキンで仕事をします。私はルックブックを作りました。それは、資料集です。時代的な考証や流行の流れをグラフィックに起こした資料です。ドレスのことばかりがまとまっている100ページくらいのものですが、カラーバリエーションや、第一帝政期とルネサンス期に関係のあることについてもまとめました。そして、こうした資料集を最初に作ってしまって、それをクリストフに提出していました。役者たち、ベル役のレア・セドゥにもです。それで、次にとりかかったのは、マネキンに布で輪郭をつくっていく作業ですが、これも少しずつ形になっていきました。形にするにあたっては、役者の演技の邪魔になったり体の動きに不自由が出るドレスにはならないように、ゆとりを持たせるように気をつけました。ファッションショーの衣裳とは違って、それ自体で完結するものではなく、劇の世界に組み込まれるひとつの要素になるように」


    ――第一帝政期のファッションの魅力はどんなところですか?

    「とても近代的なファッションが流行っていたんです。シルエットは縦長で、とても洗練されています。それだけでも登場人物の背景を語る肉付けになりますし、また、むだな飾りをつける必要がありません。鮮やかで魅力的です。ルネサンス期の流行との関連は、近からずも遠からずですが、威厳のある劇的な感じに通じるものはあります。ちょうどいいバランスがとれています。」


    ――役者さんたちの衣裳の反応はどうでしたか?

    「役者さんたちとは、仮縫いのときにボリュームやシルエットの調整をして、それから、本番のものを作る前にはサンプル品を作りました。ドレス用に、すごく細かい色見本がありました。どのドレスも野獣からベルへの贈り物です。最初のドレスの色は、アイボリー、それからブルー系、それから緑、赤といった具合になります。シナリオを手掛かりにして、いろんなスタイルを図版に起こしました。レア・セドゥが袖を通すと、すばらしいことに、みごとに着こなし、ドレスに着られてしまうようなことなどなかったのはすごいことです。それから野獣の衣裳ですが、野獣の衣裳は王子の衣裳を出発点にして考えました。というのも、野獣は、色々なできごとの末に王子がなってしまった姿です。野獣の衣裳も、王子の衣裳だったものが変化したもの。王子の姿が野獣に変わってしまった結果、着ているものも一緒に変形したのです。これをコンピュータ処理でなく、現実の衣裳で表現するのです。私たちは、キットを用意して、それで調整をかけたうえで、ヴァンサン・カッセルの野獣の体に着せて、さらに修正が加えられ、彼の胴衣の背にあてながら肉付けしました。日本の侍の着ているコスチュームにはインスパイアされました。限られた時間内でそれを仕上げるために、夜遅くまで作業が何日も続きました。」


    ――素材選びについてはどうでしたか?

    「リサーチのうえでしました。ベルの最初のドレスは、言ってみれば首枷のようなものなんですが、ある種、スペインのおごそかなマリア像とか、日本の芸者のような、刺繍とかレースが施された、特別な仕立てのものである必要がありました。それから青いドレスですが、これには、きらめきが必要でした。このドレスについては紆余曲折がありましたけれども、ベルが水のなかでも氷のうえでも動きやすいものであることが重要でした。緑のドレスには、ビロードを使いました。このドレスは、野獣の世界である森に溶け込むようなドレスに仕上げなければいけませんでした。最後の赤のドレスは、洗練されていますが、素材の繊細なドレスでした。この赤いドレスはベルのドレスのなかでもっともアクションシーンに耐える作りにしなければいけないドレスなのですが、私たちは、同じものを3着作って、壊れてしまった場合に備えました。クリストフ・ガンズ監督は、マイケル・パウエルの映画が好きで、あと、日本に由来する物への感度が高い人なんです。ですので、私は日本の折り紙の発想を衣裳のディテールに取り入れたりしましたし、袖や、石をちりばめさせたり、刺繍飾りなど、いろんな世界の異なるものを一緒くたに取り入れました。そうして最終的にアーティスティックな方向になるようにもっていきました。」


    ――衣裳部門以外の裏方部門とはどのような連携がありましたか?

    「美術チームのチーフのティエリー・フラマンは、私よりも先にプロジェクトに入っていました。私が入った時は、すでに大枠が決められた後だったんです。ですからスムーズでした。クリストフ・ガンズに出された注文は、マイケル・パウエルの映画「赤い靴」「黒水仙」のような色彩の強さとか、明暗のこととかで、衣裳のリサーチの方向性を決めるにあたっては、日本の宮崎駿の作品のなかにもインスピレーション源が見つかりました。制作サイドが私に、舞踏会のシーンで着るドレスは借りものでどうかと提案をしてきたことがありましたが、それを私が反対したのは、監督から言われていた世界観を忠実にやろうとしたからでした。そこは主張せざるを得ないところでした。私たちは、あるドイツの服飾関係の会社と組んで、その会社にはよくサポートしてもらいました。マイケル・パウエル的なものは、本当に美しい、色の、その色の深さや明暗とともに、装飾をつきつめていったところにもありました。あとで映像を観て、撮影監督のクリストフ・ボーカルのカメラテクニックによって引き出された部分も大きいと感じました。」





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    インターネットで見つけたAficiaのインタビューを、ここに翻訳しました。映画の衣裳デザインのことも気にしてみると面白さ倍増しそうですね。

    ところで、当ブログについてご意見などもお待ちしています。


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