映画報vol.18 フリーダ・カーロの映画 | 23:23 |
写真家・石内 都さんのことを、写真集「ひろしま」で知りました。
「ひろしま」という写真集は、広島平和記念資料館に保管されている被爆者の遺品、とくに衣服が撮影された写真集で、そこには人物は写されていません。被写体は衣服。その衣服たちが、声にならないメッセージで訴えかけてくるようで、とてつもない時間のうねりのようなものも押し寄せてくるのを感じさせる写真の表現方法がとても印象深かったのですが、そんな写真集「ひろしま」の写真家、石内 都さんが、最近、メキシコの女流画家フリーダ・カーロの遺品を撮影したといい、その様子は記録映画「フリーダ・カーロの遺品 ――石内都、織るように」として この夏に【シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開】されます。というわけで今日の映画報はメキシコの画家フリーダ・カーロと日本の写真家 石内 都さんの映画についてです。先日試写に行ってきました。
フリーダ・カーロの遺品というのは、フリーダ・カーロが自画像のなかでもよく描いた色あざやかなメキシコの民族衣装のこと、そして小児麻痺と大きな交通事故が原因で不自由だった身体を支えたコルセットや靴や装飾品です。
メキシコシティにあるフリーダ・カーロ博物館から正式に遺品の撮影依頼を受けた石内さんが現地を訪れて遺品一点一点を撮影していく、
映画のカメラがその後を追い、撮影現場に立ち会って、撮影する石内さんの姿を記録しました。
「遺品を写す」という行為を通じて現役の女流写真家が画家であった故人の死と生を見つめる、
その姿を、映画のカメラのまなざしは見つめつづける。
石内さんは生前の画家に会ったことはありません。遺品を写すをいう行為を通してはじめてフリーダ・カーロと向き合う石内さんは何を思い、何を感じとっていくのか――そんな問題提起がされるなかで
石内さんはじっと、ひとりの女流画家の生の痕跡を、遺品から拾い集めるようにたぐりよせ、たどっていきます。
時間に隔てられたふたりの女性と、「過去と現在」、「生と死」というテーマ、
そこへ「記憶と記録」、「撮る・撮られる」、「見つめる・見つめられる」と入れ替わることのある関係性……
石内さんがのぞくファインダーを通して見えてくる「フリーダ・カーロ」像
それは一般的に広まっているフリーダ・カーロ像とされているものとは一線を画するものともいえ、
その新鮮さや、意外性
それから、フリーダ・カーロが自画像やポートレイトのなかでいつも着ているドレス(テワナドレスと呼ばれるメキシコの民族衣装)のことを探りたいと思っていた私も、
このテワナドレスがフリーダ・カーロのルーツともいえる伝統衣装であることや、日本のキモノとの共通点が見つかることで、さらに興味がわきました。
共通点というのは、繊細な刺繍のことや、生地を何枚も重ね着して着るという着方のことや、独特の色づかいや色あわせがあるところや、親子(娘←母←祖母)三代にわたって受け継いで着るのが一般的であるというところや、破れたり劣化した部分は修繕しながら着られることなどで、石内さんもそうしたキモノとの共通点について撮影中に指摘されていました。 (↓ 絵は私の想像のなかのフリーダ・カーロ像と映画のなかで象徴的だったドレス)
映画「フリーダ・カーロの遺品 ――石内都、織るように」、それは……
遺品の撮影という行為によって、フリーダ・カーロというひとりの女性の魂と出会った石内さんの記録
また、
月並みな言い方になってしまうけれど、
いろいろな角度から考えさせられる答えのない記録映画
……
石内さんが映画のなかで撮影されていた遺品の写真は、
海外で写真集の出版と写真展が開催されました。
国内ではまだのようで、この映画公開に合わせて国内でも開催されてほしいものですが、写真展関連の情報は続報が待たれます。
映画の公開は8月です。
詳細日程は公式サイトのほうで後日更新
↓
■Deta■
監督・撮影:小谷忠典
(2015/日本/89min)
公式サイトhttp://legacy-frida.info/
今回の映画報 長くなってしまいました。
つづく
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