第3話「ある朝、庭で起きた悲しい出来事」 | 14:58 |
ある朝、娘が、家の庭から私を呼んだ。
「ママ、ママ、見て、ほら」
声がするほうへ行ってみると、小さな小鳥の死骸が庭の片隅の土の上に横たわっていた。うす茶色の羽根をした小さな小鳥。
横向きになって気持ちよさそうにただただ眠っているようにも見える。でも息はない。その周囲は、摘み取ったばかりのクローバーの花と草で額縁のように飾られていた。もう花は手向けられた後だった
私はおもわず、娘のほうを見た。それからこの子が生まれたばかりだった頃のことを思い出してしていた。気持ちよさそうに眠るような小鳥の死顔がどこかあの頃の娘の寝顔と似ていたからだ。でも、すぐあとから不謹慎だったと後悔した。なぜこんなこと…。でも現に小鳥は今にも目覚めそうな雰囲気だ。
こんなに美しい生き物が、逝ってしまわなければならなかったというなんて…。
「なにがあったんだろう」
と、私が屈んだとき、娘が私の肩の横で言った。娘の小さな顔は真剣そのもので小鳥をのぞき込んでいる。
大人みたいな顔をして、言うので、私はなんだかびっくりした。だっていつの間にこんな表情をするようになったのだろ、そう娘の横顔を見ながら思った。
「うちの庭を選んでくれたんだね小鳥さん。ありあとう。さよなら」
土の上に横たわる小さな寝顔に向かって、娘は言った。
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